2025年3月12日 (水) 5:52
保険医療制度の末路
病院にかかれば、3割負担で、 当たり前のように、薬がもらえる。 そう思っていたのだが、調剤薬局の事務員として働き始めて、 その当たり前を疑うようになった。 最近は、抗生剤が入らないらしく、 常に、在庫が枯渇している状態だ。 抗生剤は、患者の命に関わる重大な薬である。 そもそも、抗生剤とは、細菌と動物細胞の違いに着目して作られた薬だ。 人間をはじめとする動物の細胞には、 細胞膜しかないが、細菌や植物、キノコ類には、細胞壁が存在する。 抗生剤は、それらの細胞壁を破壊する。 抗生剤の副作用に、下痢があるのは、細菌の一種である善玉菌まで破壊してしまうから。 ちなみに、ウイルスには細胞壁がないので、 抗生剤は効かない。 昔は、風邪で抗生剤をくれ、という人が多かったらしいが、 風邪の80%から90%が、ウイルス感染によるものだから、 抗生剤を使っても意味がない。 むしろ、安易な抗生剤の使用によって、 抗生剤に耐性を持つ細菌が生まれている。 だから、よほどのことがない限り、 抗生剤を使う必要はない。 しかし、抗生剤で救える命があるのも事実だ。 私も、抗生剤に命を救われた身である。 抗生剤がなければ、敗血症で死んでいたかもしれない。 そうであるからこそ、抗生剤が足りない現状に、問題意識を感じている。 COVID-19でのカロナール不足や、 インフル流行によるタミフル不足は理解できる。 一時的に、需要が増えているだけだから。 しかし、抗生剤に関しては、急激に需要が拡大しているわけではない。 にも関わらず、なぜ抗生剤は手に入らないのか? それは、 一、ジェネリック医薬品の利益率が低いこと、 一、ダメな方法で、薬を作って、 国から工場停止の勧告を受けたこと、が挙げられる。 医薬品の値段を決めているのは、製薬会社ではなく、厚労省だ。 高齢化により、医療費の国庫負担が増えたことで、 厚労省は、ジェネリック医薬品の薬価を下げ続けている。 その結果、ジェネリック医薬品の利益率が下がるので、 製薬会社は、ジェネリック医薬品を作らなくなる。 製薬会社も、営利企業だ。 営利を追求することが、営利企業最大の目的なのだから、 儲からない薬の製造をやめるのは、正常な判断である。 また、国が薬価を下げすぎた結果、 発がん性物質が検出されるなど、 製造過程の問題が発覚するケースが増えている。 そうなれば、国は工場を停止するように指導するから、 対象の医薬品は、市場に出回らなくなる。 そのうち、厚労省が定める診療報酬では、やっていけないと言って、 勝手に薬を作ったり、治療したりする医者や製薬会社が出てくるかもしれない。 医師といえば、高給取りなイメージがあるが、 青春時代を勉強に捧げて、研修時代に、こき使われまくって、一人前になっても、年収1500万。 もちろん、仕事内容は過酷だ。 外科医なら、当直明けに手術…なんてこともありうる。 医者になれるほど優秀な頭脳を持っているなら、 あえて医師を目指さなくても、 民間のIT企業にでも就職した方が、稼げるし、楽だと思う。 だから、医療費削減で、医者や製薬会社の報酬が減れば、 医療の質は下がるだろう。 そうなれば、医療制度よりも先に、医療が終わる。 最近は、医療費を下げろという風潮が強い。 国会では、高額医療の上限額を上げる議論がされてて、 痔民党は、医師会の組織票や、億単位の政治献金まで失おうとしている。 無駄な医療費は排除すべきだが、 必要なものまで排除した結果、 国民の命を危険に晒していたら本末転倒だ。